アンソニー・スミスはUFCカンザスシティでチャン・ミンヤンに敗れ引退したが、その後ももう一戦戦う準備ができていたようだ。
試合中、スミスの頭頂部のひどい切り傷から顔面に血が流れ出し、医療スタッフが手当をする中、スミスは明らかに怒りの表情を見せ、ケージサイドに座っていた人物に中指を立てた。視界に入った人物に何度も中指を立て、最終的にはキャンバスから立ち上がりケージに戻り、そこでも相手に怒鳴り続けた。
スミスは引退を延期するほど激怒した理由を説明した。
「試合前にネブラスカのシャツを着た男がいて、ブーイングをしたり中指を立てたり、悪口を言ったりしていたんだ」とスミスは明かした。 「でも、自分がやるべきことに集中していた。試合後、彼の友人が応援しているのに、彼はまだ私に中指を立てて、かなり失礼なことを言っていたんだ。本当に腹が立った。彼はネブラスカのシャツを着ていた!ここは家族みたいなものなのに。ここはそんなに大きなコミュニティーじゃないんだから!」と明かす。
スミスはネブラスカ州オマハに住み、キャリアを通して地元を誇りを持って代表してきた。だから、ファンがネブラスカのシャツを着て、同時に悪口を言っているのを見て、彼は不快に感じた。引退試合で負けたという感情も加わり、スミスは怒りと憤りがあの瞬間に彼を支配してしまったと認めている。
実際、ジャンはケージに駆け寄り、スミスがフェンスを飛び越えて観客席の騒々しいファンと決着をつけようとした時、相手を窮地から引き戻そうとした。
「ミンヤンは『そんなことするな、兄弟、やめろ』って止めた。いいか、私は感情的になっていた。試合は自分の思い通りにはいかなかった。それが現実だ。それが試合の一部なんだ」と話す。
「信じられなかった。この試合に全身全霊を注いでいる。私が弱いだとか、あまり強くないとか思っても構わない。観客席に座っていたとしても、私と同じことをしているわけではない。特にネブラスカのシャツを着ているならなおさらだ。ネブラスカのシャツを着て悪口を言うなんてありえない! 冗談じゃない! それだけだ」と打ち明けた。
土曜の夜が格闘技キャリア最後の試合となったことについて、スミスはまだこの出来事を整理しようとしていた。
引退に向けて進む中でおそらく最も辛かったのは、格闘技に関しては明日がないと悟ったことだろう。それは、彼が20年近くも実感したことのなかった感情だ。
「奇妙な感じだ」とスミスは言った。 「戦うことに慣れているから、勝とうが負けようが、とにかく次の目標に向かう。名刺入れをめくって、負けたからこの人を見つけなきゃ、このランキングを目指さなきゃ、って思う。勝てば前を見る。他に何もないんだ。だから、悲しむのを拒んでいる。悲しむべきじゃない。長い道のりだった。17歳から続けて、あと数カ月で37歳になる。もう十分だ。このスポーツでできることを中心に人生を築いてきた。このスポーツは、今まで絶対に手に入らなかったチャンスを与えてくれた。終わったことを悲しむのではなく、この勝利を喜ぶように自分に言い聞かせているんだ」と説明した。
地元だからこその怒り。ファンにも届いただろうか。